360mm簡易水冷が故障してCPUが冷えなくなった

パソコン

2022年に導入した簡易水冷が故障してしまい、CPUが冷えなくなってしまいました。メーカー保証期間中だったため、新品交換していただき当初の性能を回復することができました。この記事ではその顛末をご紹介します。

機器構成

まずは機器構成の紹介です。以前に紹介した構成と同じです。

簡易水冷:ENERMAX LIQMAX III ARGB (ELC-LMT360-W-ARGB)
マザーボード:Gigabyte B550M AORUS Pro
CPU:AMD Ryzen7 5800X
メモリー:Crucial DDR4-3200 8GB×4枚
VGA:ASUS Dual Radeon RX6750 XT
ケース:Corsair 4000D

CPUが全然冷えない症状

 2022年の夏に簡易水冷を導入してから、約1年半が経過した2024年春ごろに、ファンがやたら高回転になることでCPUが冷えていないことに気づきました。グリスがヘタったと思い、高性能グリスを買ってきて塗り替えてたら3℃程度下がったので、様子見することにしました。

 それから1か月も経たないうちに、みるみるCPU温度が上がるようになり、最終的にはCPU負荷が10%程度の時に90℃に到達する状態になってしまいました。90℃はRyzenの上限温度のためサーマルスロッティングが発生して、これ以上上昇することはありません。ただCPUの本来の性能が発揮できていないことと、ファンがずっとフル回転していて、すこぶる煩いことが難点です。

原因を考える

 簡易水冷システムの中には冷却水が循環していて、下記の様なサイクルでCPUを冷やしています。

  1. 水冷ブロックがCPUから熱を奪う
  2. 水冷ブロックが吸収した熱は、内部を循環する冷却水によって、ラジエターに運ばれる
  3. ラジエターで冷却水から空気に熱を放出する
  4. 冷えた冷却水は、また水冷ブロックに戻る

 CPUが冷えない原因は、(1)水冷ブロックとCPUが正しく接触していない、(2)冷却水が循環していない、(3)ラジエターが熱を逃がせない、のいずれかだと考えられます。今回は、すでにグリスの塗り替えは実施済みなので、(1)は問題がなく、(3)はファンが回っていることが目視できているので、(2)が原因である可能性が非常に高いです。

状況を確認する

 先に書いたように、冷却水が正しく循環していないと推測して、PCの中の状態を確認していきます。

 まず、冷却水を循環させているポンプが回転しているか確認します。簡易水冷の場合、ポンプは水冷ブロックと一体化しています。ポンプの回転数はセンサーで検知していて、マザーボードのBIOSやファン制御ソフトなどで確認できます。

 今回私が遭遇したトラブルの場合、ポンプの回転数は正常に表示されていました。ポンプの回転数が表示できていることから、ポンプは回っていると判断できます。正確にはポンプのモーターは回転しているものの、冷却水を循環させるインペラは止まっているのかもしれません。こればかりは、分解しないと確認できないですね。

 次に冷却水が循環しているか確認します。さすがにCPU温度が90℃に張り付く状態だと、冷却水によってラジエターが熱々になっているはずです。

 ここでは下の図を参照してください。図の右側にラジエターがあり、ホースによってラジエターと水冷ブロックが繋がっています。ホースはそれぞれ、奥(白矢印)がラジエターによって冷やされた冷却水が出ていく方、手前(赤矢印)水冷ヘッドによって熱された冷却水が戻ってくる方です。

 戻り側のホースを触ってみると、すこぶる熱いことが確認できます。このことから冷却水が循環していることが推測されます。次はラジエターを触ってみます。すると赤い四角で囲った部分だけが温かくなっていました。本来ならラジエターが全体的に温かくなるはずですが、手前のホースの近くは温かく、奥のホースの近くは冷たいです。

 以上の観察から、ポンプは回っていて水は循環しているものの、循環の速度が遅い(流量が少ない)ため、熱がホース内で滞留していると推測しました。おそらくラジエター内の水路が詰まっていてオーバーヒートしているのでしょう。古い自動車では、冷却水に錆が混じってラジエターが詰まることはよくありますが、PCでも同じようなことが起こるのかも知れません。

原因の切り分け

 ここまでの状況確認により、簡易水冷システムに何らかの問題が起きていることが推測できます。最後に、マザーボードやCPUが原因ではないことを確認するため、CPUファンを交換します。AM4に適合するCPUファンを持っていなかったので、とりあえずAmazonで安いCPUファンを買いました。新たに購入するCPUファンの調子が良ければ、それを使い続けても構いません。

 今回購入したのは、ALSEYEというメーカーのM90というARGB対応CPUファンです。ヒートシンクの中に90mmファンが埋め込まれている構造で、見た目がスッキリしています。以前、余った中古機材でPCを製作する際に使ったことがあります(この時製作したPCは売却済み)。
 少し冷却は弱いですが、見た目にカッコ良く値段は安いので、今回もチョイスしました。取り付けが若干手間なところが難点で、Amazonの評価もこの点がマイナス評価とされていますが、私としてはこれくらいの手間であれば、マイナス評価をする程ではないと思います。

 ALSEYE M90に交換したところ、正常なCPU温度に落ち着いたので、CPUやマザーボードの異常は否定されました。ただやっぱり、爆熱のRyzen7 5800XをM90で冷やし切るのは少々難しそうです。温度上限の90℃には到達しませんが、ファンがガンガン回るのちょっと煩いですね。

ENERMAXのサポート対応が良い

 ENERMAXのサイトを確認したところ、LIQMAX III ARGBの保証期間は、3年であることが確認できました。購入当時の納品書を含めて、付属品は一式揃っています。ここまで確認した症状と状況、機器構成をメールに記載して、ENERMAXのサポートに送信しました。翌日には返答があり、一式をサポート窓口に送ると、サポートにて検証して問題が確認出来たら対応しますとのことでした。

 メールを送信した時点で梱包は済んでいたので即日発送し、それから2日後に良品が返送されてきました。対応がめちゃくちゃ早いです。ちなみに、付属品も含めて一式を送りましたが、メーカー側で抜き取ったのは水冷装置のみで、同封した付属品はすべて返送されました。つまり、新品一式+もとの付属品一式が返ってきたわけです。この中にはARGBファン3つも含まれていますので、単純にファンが3つ増えた感じで、これはすごく嬉しいですね。余ったALSEYE M90とRGBファン3つは、嫁マシン(Core i5 10400F)に移植することにしました。

改めて簡易水冷に換装する

 代替で導入したALSEYE M90だと力不足の様なので、戻ってきたENERMAX LIQMAX IIIに換装しました。戻って気は簡易水冷は正常なので、CPU使用率が10%程度の時に、40℃台で推移する正常な状態に復旧することができました。

 今回、1年半~2年程度で故障となってしまいました。保証期間の3年到達まで、あと1年ちょっとですが、おそらくそれまでは問題なく過ごせるでしょう。仮にまた同じ問題に遭遇した場合は、保証期間が過ぎていると考えられるので、その時には冷却水を抜いたりポンプ部分を分解したりして、中の構造がどうなっているのか観察したいと思います。

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