2020年3月にIntel Core2 Quad Q9650搭載PCでフォートナイトをプレイできるか?という記事をアップしました。あれから5か月間、ほぼ毎晩、家族4人でフォートナイトで遊ぶ日々が続いていますが、さほど腕前は上がらないので、道具で何とかならないかと試行錯誤しています。そんな試行錯誤の中、クラウドゲームサービスのGeForce NOWを使ってみたのでレポートします。
使用しているデバイスが変わった
2020年3月の記事作成時点では家族4人のデバイス構成は以下の通りでした。
私:DELL XPS 420(Core2 Quad Q9650+Geforce GTX1050 Ti)→PS4へ変更
嫁:Nintendo Switch
長女:Apple iPad (第6世代 32MB)
次女:Nintendo Switch Lite
私はしばらくの間、DELL XPS 420でプレイしていました。しかし、PCのパフォーマンス不足のため、ゲーム内のオブジェクトが正しく描画されないことがしばしば発生していました。家のドアが表示されず、どこから家に入ればよいか分からなかったり、あるはずの柵が描画されず、何もないところで引っ掛かり前に進めなくなったりするなど、オブジェクトが描画されないことでプレイに支障をきたし、フラストレーションが溜まる場面が起こるようになったのです。
そこで、パフォーマンス不足のXPS 420を使うのはヤメて、PS4でプレイすることにしました。PS4でもフォートナイトがプレイできることをすっかり忘れていたのです。
PS4を嫁に譲って、自分はGeForce NOWを使う
私がPS4を使う様になってしばらくすると、今度は嫁のNintendo Switchで処理落ちが気になり始めました。描画オブジェクトやキャラクターの数が増えると、明らかにフレームレートが下がってしまい、画面がカクカクしてしまう様です。
次女のNitendo Switch Liteの場合は、同じマッチに入ってプレイしても特に問題がないため、嫁が使っているNintendo Switchだけで処理落ちが発生する様です。次女と嫁の環境の違いは、嫁のNintendo Switchはテレビに接続していることです。
Nintendo Swithcをテレビに接続した場合、ディスプレイの解像度は1980×1080になります。これに対してNintendo Switch Liteは、内蔵ディスプレイしか使用できず、その解像度は1280×720です。どちらのSwitchも搭載しているCPUとGPUは同じですが、Switch Liteの方が解像度が低いため処理が幾分軽くなるようです。
試しにNintendo Switchのテレビ出力解像度を下げてみると、画面のカクつきはかなり改善できました。しかし解像度が下がると、遠くのオブジェクトが不鮮明になってしまう弊害があります。
画面描画の不良が原因でヨメが激ギレしてしまうので、周りの雰囲気が悪くなってしまいます。これでは勝てる勝負も勝てなくなるので、早急な対策が必要となりました。
そこで、私が使用しているPS4を嫁に譲って、私がXPS 420を再度使用することにしたいのですが、XPS 420も画面描画の問題を抱えているので何らかの対策が必要です。これまでの検証でCPUがボトルネックになっていることは明らかですが、このプラットフォームで最上位のCPUを搭載しているため、これ以上のスペックアップは不可能です。加えて、新しいゲーミングPCなんて買う資金もありません。
このような状態で悶々としていたところに、GeForce NOWの一般向けサービスが開始されたので試しに使ってみよう!となったわけです。ようやく長い前置きが終わりました。
GeForce NOWとは何?
GeForce NOWとは、PCゲーマーにとってはお馴染みの”GeForce(ジーフォース)”というグラフィックチップ(GPU)を製造している、NVIDIA社が提供するクラウドゲームサービスです。NVIDIAは日経に「謎のAI半導体メーカー」と書かれたことがありネットでかなりイジられましたが、ITに明るい人なら間違いなく知っている世界的な超有名企業です。
1997年にRIVA 128というGPUを引っ提げてグラフィックカード業界に参入し、パソコンでの3Dグラフィックスに革新をもたらした企業です。ちなみに、Nintendo Switchには、NVIDIAが設計製造するCPU+GPUが搭載されています。さらにちなみに、現在はAI産業のリーダー企業であり、自動運転技術に欠かせないプロセッサーを提供している企業でもあります。
そんなNVIDIAが自社製GPUを搭載したサーバーをデータセンターに置き、ゲームの処理をデータセンターで行い、ユーザーの手元にあるデバイスに映像だけを送り込むサービスを提供する様になりました。これはゲーム機やゲーミングPCがデータセンターにある様なイメージです。データセンター内のGPUで重い処理を行うので、ユーザーの手元のデバイスでは高性能なCPUやGPUを搭載する必要がありません。このように、データセンター側でゲーム処理を行うことで、次の様なメリットやデメリットがあります。
【メリット】
・手元のデバイスを選ばない≒廉価なデバイスでも処理が重いゲームが遊べる
・ゲーミングPCの様な高価な機材を所有する必要がない
・古い機材でも大丈夫(最新のPCに更新する必要がない)
【デメリット】
・ネットワーク環境にかなり依存する
・月額費用が掛かる
月額料金が必要な代わりに、高額なゲーミングデバイスを持つ必要がないことが最大のメリットです。また、ゲームはGeForce NOWで処理するため、デバイスが変わっても同じゲームを楽しむことが出来ます。例えば、自宅ではPCでプレイして、外出時にはスマホで同じゲームの続きをプレイできるということです。
GeForce NOWの利用料金
2024年3月29日をもって、ソフトバンクが提供するGeForce NOWはサービスを終了するため、記載内容を修正しました。
GeForce NOWのサービスは特定の提供プロバイダーがサービスを提供します。日本ではauがサービスを提供していて、月額1,980円で利用できます。入会から1か月間は無料です。また、2024年春からは、NVIDIA自らがサービス提供を開始します。NVIDIAのクラウド基盤では、最新のGPUであるGeforce RTX 4080相当の環境を実装するようです。
また、有料プラン以外に月額料金が無料のプランも用意されています。有料プランと比べて、混雑時に接続しにくくなる、連続プレイ時間が1時間に制限される、などの違いがありますが、まずは無料プランで試すのも良いかもしれません。(auの無料プランはスマートパスプレミアム会員のみのサービスですが、現在新規申し込みは停止中です)
GeForce NOWが提供しているサーバーのスペック
ここから先はテクニカルな内容ですので、よく分からない用語が頻出します。
GeForce NOWのサーバースペックの情報はググっても殆ど出てこず、あまり積極的には公開していない様です。ユーザーの検証によると、IntelのカスタムCPU(第9世代Core i7 の4コア相当)、GPUはGeForce RTX 2060相当のスペックであることが分かっている様です。
GeForce NOWを起動した状態でステータス確認画面(Ctrl+ALT+F6)を表示させると、RTX2060相当である事は確認できます。試しに私の環境で表示させてみました↓
この数値の意味はNVIDIAの公式ヘルプに記載されているので、気になる人は確認してみてください。
How can I access advanced network streaming stats for GeForce NOW for PC and Mac?
別のソースによると、ドライバーは「NVIDIA GeForce RTX T10-8」と判明しています。仮想GPUであるNVIDIA GRIDのネーミングルールと同じであれば、T10-8から推測して「NVIDIA T10のビデオメモリ8GB分割版」という意味と思われます。TuringアーキテクチャであるNVIDIA T4は市販されていますが、T10というGPUは市販されていませんので、おそらくカスタムGPUなのでしょう。このカスタムGPUに大容量のメモリ搭載して、仮想化技術で8GBに分割したものと推測できます。
ネットワークとデータ処理の遅延
上のステータス表示を見てみると、フレームレートは60fps(16ms)となっています。60fpsのモニターを使っているのでこれ以上の値は出ません。リフレッシュレートの高いモニターを接続すると、60fps以上に設定できるかも知れません。ただし、後述のネットワーク帯域の問題があるため、GeForce NOWの上限が60fpsに固定されている可能性もあります。また機会があれば検証してみたいです。
rtd(クライアントからサーバーへの往復遅延)が12msとなっています。これはネットワークでどれくらい遅延があるかを表しています。往復なので、パソコン→サーバー→パソコンのネットワーク遅延値で、インターネット回線の反応速度を表しています。
t(クライアント全体のレイテンシ)はPCが受け取ったh264で圧縮された画面データをデコードして表示する(正確にはGPUのバッファに乗っける)までの時間です。
サーバー側の処理にどの程度の遅延があるのかは不明ですが、仮に0msだったとして、パソコンでの入力操作が画面に反映するまでの遅延時間は、rtd(ネットワークの遅延値)+t(パソコン側の処理遅延)の合計値となります。我が家では、12ms+17ms=29msなので、60FPSの場合は約2フレーム分の遅延がある事になります。ネットワーク遅延が大きいと、入力操作をして画面に表示されるまでのラグが大きくなってしまいます。
ネットワーク帯域
GeForce NOWのアプリケーション上で、ストリーミング品質(画面の表示品質とネットワーク帯域の消費のあんばい)を設定する事が出来ます。基本は「バランス」を選んでおけば問題ないですが、解像度を下げるとデータ使用量を減らすことが出来るので、レスポンスを良くする等のチューニングが可能です。(データ量が減れば処理のレスポンスは上がります)
我が家では「バランス」のままプレイしています。試しに「カスタム」を選択して解像度を1600×900に下げてみたところ、ゲーム内でのFPSの劣化は幾分改善しましたが、小さなオブジェクトが見えにくくなる弊害があったので、1920×1080に戻しました。
VSyncはクライアント環境によってはオフの方が良い場合もありそうですが、我が家の環境ではオフにすると、コンニャク現象が出てしまうのでオンにしています。Vsyncって何?という方はドスパラのHPで解説されているので読んでみてください。
使用するネットワーク帯域は1920×1080@60FPSで、平均25Mbps程度です。描画する画面にもよりますので増減があります(最大50Mbpsくらいに跳ねることもあります)。
我が家ではPCとルーター間は有線LANで接続しています。5GHzのWiFiであれば問題無いと思いますが、WiFiデバイスが増えたり、一時的な混線状態が起こると途端にストリーミング品質が劣化するので、有線LANで接続するのが望ましいです。
ちなみに2.4GHz帯のWiFiでは帯域不足で全く遊べないので、GeForece NOWでうまくプレイできないという人は、ルーターとパソコンのネットワークを確認してみてください。
ちなみに、最も品質の良い設定で1時間遊ぶと、約10GB程度のデータ通信量が発生します。4G LTEやUQ WiMAXを使用したモバイルWiFiルーターでは一瞬でパケ死しますし、ネットワーク遅延的にもラグが酷く全く役に立ちません。そのため、GeForce NOWで遊ぶためには光インターネットが必須となります。我が家ではNURO光を使用していて、まったく問題は出ていません。インターネットの「速さ」は反応速度(レスポンス)と帯域(スループット)の2種類があり、光インターネットはどちらも優れています。これを機会に、自宅のインターネット環境を見直すのも良いかもしれません。
4GやWiMAXは帯域は広いものの、レスポンスが悪い事が多いため、GeForce NOWで遊ぶ場合は、今のところ光回線しかありません。5Gネットワークが一般化すれば状況が変わる可能性もありますが、今は光回線がほぼ一択です。おそらくSoftbankやauがGeForce NOWのサービスを提供しているのは、将来の5Gネットワーク化を見据えた計画があるからだと思います。
ちなみに最近何かと話題のテレワークでも、光インターネットの方が快適な作業環境を構築できます。私の場合は会社の社内ネットワークがショボいため、自宅からVPNを通じて仕事した方が快適という逆転現象が起こっています。
パソコン側の要求スペック
GeForce NOWの公式ページに記載されている、パソコンの要求スペックは以下の通りです。
・2.0GHz以上のデュアルコアX86 CPU
・4GBのシステムメモリ
・少なくともDirectX 11をサポートするGPU
または、
NVIDIA GeForce 600シリーズ以降
AMD Radeon HD 3000シリーズ以降
Intel HD Graphics 2000シリーズ以降
スペックを見る限り古いパソコンでも大丈夫そうですが、1点だけ注意点があります。
サーバーから送られてくる画面データはh264でエンコードされていて、クライアントでデコードして表示するのですが、リアルタイムでデコードするにはそれなりのスペックが必要です。
GPUにh264デコード機能があれば利用する事が可能ですが、無い場合はCPUを使ってソフトウェアでデコードする様です。この場合、CPUは記載された以上のスペックが要求されますので、一見しょぼいPCでもプレイ可能に見えますが、GPUはそれなりの物を搭載している必要がありそうです。
手持ちのPCで試したところ、動作可否は以下の通りでした。もうこんな古いPCで遊ぶ人も居ないと思いますが、参考になればうれしいです。
動作OK
Core2 Quad Q9650 + GeForce GTX 1050 Ti
Core2 Quad Q9300 + Radeon HD 4650
動作NG
Core i5 M560 + Geforce GT 420M
Windows版のFortniteが起動します
GeForce NOWアプリからFortniteを起動すると、Windows版のFortniteが起動します。サーバー側ではWindows上でFortniteが起動していて、その画面だけが転送されてきている状態です。勘違いしがちですが、クライアントデバイスがMacであれ、Androidであれ、iOSであれ、GeForce NOWで提供されるゲームはWindows版です。これはクラウド上ではWindowsが稼働しているからです。IT技術者としては当たり前なのですが、一般ユーザーさんだと混乱する部分だと思います。
GeForce NOWのインフラ上ではWindowsの仮想マシンではなく、仮想コンテナの様な状態でFortniteが稼働しているのかな?と想像してます。知らんけど。
ただ、こういった場合のWindowsのライセンスってどういう形態になっているんでしょう?アプリケーションを配信するだけにしてもVDIライセンスやRDSライセンスが要ると思うのですが・・・う~ん。Microsoftと何らかの特殊な契約をしているのでしょう。
Fortniteでのディスプレイ設定
脱線してしまいましたが、通常のWindows版と同じFortniteが起動しますので、ゲーム内でディスプレイ設定やグラフィック設定を弄ることが出来ます。
ウインドウモードを「ウインドウ」にしても、GeForce NOW側でフルスクリーンに拡大されますので「フルスクリーン」を選択した状態から変える必要はありません。解像度はGeForce NOWの設定と合わせて置けばOK。敢えて異なる設定にする事もないでしょう。
フレームレートは自由に選択できますが、GeForce NOWで60FPSに制限しているので、60以上を選択する意味はありません。ちなみにゲーム内では240FPSまで出力されることは確認できたので、サーバースペックは相当高いです。(2020年8月13日現在はゲーム内のFPSも制限されているのか、75FPS以上は出なくなっている様です)
Fortniteでのグラフィック設定
グラフィック設定はデフォルトだと以下の状態です。一度設定してもFortniteを終了するとデフォルトに戻ってしまうので、プレイの度に設定しなおす必要があります。
自動設定ボタンを押すと「最高」が選択されます。このことからもサーバー側のパフォーマンスが高いことが伺えますが、サーバーリソースを利用者でシェアしている事から、負荷が高くなるとフレームレートが落ちる傾向があるので、「最高」ではなく「高」にしておくのがオススメです。
プレイ中のフレームレート
上限は60FPSに固定しているのでこれを上回ることはありませんが、下回る事は結構あります。マッチが始まってバスから降りる時が負荷が高い様で、30fps台まで低下する事があります。またプレイ中も度々フレームレートが下がることがあるので、上級者だと結構イラっとするかもしれません。
また、同じ60FPSのPS4と見比べると、GeForce NOWで表示する60FPSでは画面に表示される値としてのフレームレートは同じでも、PS4の方が若干滑らかに動いている様な気がします。Fortniteで観戦状態にして同じ画面を表示させると分かりやすいですが、ヌルヌル感はPS4の方が良いと感じます。ただし表示の遅延はあまり感じません。
プレイ中の操作感
上記の通り60fpsでありながらヌルヌル感が足りない事が原因なのかは分かりませんが、PS4からGeForce NOWに変えると、エイミングがやりにくくなった様に感じます。
同じデバイスでフレームレートを変えて違いを検証する事は可能ですが、PC(GeForce NOW)とPS4でデバイスが異なるため、コントローラーの設定を完全に一致させる事が難しく、違いを数値化する事が難しいと思います。
やってみると何か見えるかもしれないので、時間があれば練習場を使って命中率の測定をしてみたいですね。結果が出ればこの記事を更新します。
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